フラメンコ今昔

2016/9/30 ~フラメンコ今昔~


《第4回全国学生フラメンコ大会》を経て、
2016年11月27日(日)第5回開催へ



2014年acueducto第16号に、
《第2回全国学生フラメンコ大会を終えて》を
寄稿させていただきました。

その後、同年11月に第3回大会、今年1月の第4回を経て、
来たる11月27日(日)に第5回が開催されます。

今回ここでは第4回の審査結果、そして変わりつつあるフラメンコ、
決して変わらないもの、について書かせていただきます。


全国学生フラメンコ大会は、3部構成となっています。

第1部が『セビジャーナスコンテスト』、
第2部に『オーレフラメンコ』、
第3部は『ゲストパフォーマンス-審査発表-フィナーレ』

で締めくくられます。


この第4回の参加大学は関東からのエントリーも多く、
9校48名と大規模なものになりました。

そして、カルメン・アルパレス(フラメンコ講師)、
ファン・マヌエル・ディアス(サラマンカ大学スペイン語講師)、と
私 山本秀実が審査にあたりました。


京都外国語大学の多大なご支援のもと、
スペイン語学科とフラメンコ部が主催し、
学生達が中心となって運営されるこの大会。

年々卒業していってしまう学生達がいかに次に繋げていくかが
難しく、課題ではありましたが、第4回ともなると
舞台全体の流れも良くなり、成長がハッキリとうかがえました。

そして『第4回全国学生フラメンコ大会』審査結果は、

 第1位 常葉大学(静岡)マリポサ
 第2位 早稲田大学(東京)バモ
 第3位 京都産業大学(京都) ラス☆エストレ-ジャス

となり、個人賞には、

 武田佳恋(京都外国語大学)
 滝澤良星(早稲田大学)

が選ばれました。


学生達の柔軟な発想とエネルギー溢れた踊りには、
毎年感動させられます。


しかし審査はとても大変です。

セビジャーナスという4分足らずの中で
評価しなければならないからです。

そしてセビジャーナスには一定のルールがあり、
どんな踊りを入れても良い訳ではありません。
アレンジしても良いものがある一方、
壊してはいけない、守らなければいけないものがあります。



第1位のマリポサは、第2回大会で1位、第3回大会で3位、
そして第4回に再び1位となりました。

第2回の際、セビジャーナスのルールに疑問がありながらも、
その技術とパフォーマンスで群を抜き1位。

しかし第3回ではセビジャーナスから離れてしまったため第3位。
そして第4回では疑問を抱かせず第1位に返り咲きました。


バタデコーラ(裾の長いスカート)や
パリージョ (カスタネット)捌きは見応えがありました。

ただ、<セビジャーナスのルールを順守しているか>の項目のみ
評価の低い審査員がいたことも付け加えておきます。


第2位のバモは、全体のバランスが良く、衣裳や表情も素敵で、
オリジナリティはあまり感じなかったものの、
その分オーソドックスな美しさを感じました。


第3位のラス☆エストレ-ジャスは、
アバニコ(扇)と帽子を使ったもので、
このグループもまた全体にバランスの良さが目立ち、
学生らしく好感が持てました。



フラメンコが発祥し現代の形になったのは
19世紀半ばと言われています。
今やフラメンコは世界に広がり、
フラメンコ人口はとても増えました。

私はフラメンコを始めてから37年が経ちましたが、
その間もフラメンコは大きく変わってきています。
時代と共にリズムは複雑でスピーディに、
また踊りのスタイルも様々になりました。


しかし、本当に良いものは、時を経てもその価値は変わりません。

フラメンコには、人を虜にする魅力、魔力があり、
幅広い年齢層に支持されています。

若い盛りには、強く激しいリズムと表現の奔放さに酔いしれる。
また、年を重ねれば失うものも多いかわりに、
それと引き換えにたくさんの経験を得て、
表現に厚みが出る。

世阿弥の《風姿花伝》でいうところの
『時分の花』『まことの花』
にも例えられるのではないでしょうか。


私はフラメンコのバイレ(踊り)に属していますが、
長唄三味線(今藤)、囃子(藤舎)の名前も頂戴しています。
人間国宝今藤政太郎師匠に長くご指導賜りました。

師匠が邦楽の情報誌にコメントされていることを
引用させていただきます。


 名人と達人

『僕の経験から言えば、
 良い音って30代半ばを過ぎないと出ないんですね。
 手は30前後が一番回ります。
 技術は60代半ばまではなんとか保てるでしょう。
 それを過ぎるとどんな人でも衰える。
 でも、それを克服してなお良い芸が保てる。
 良い芸を作れる人が名人だと思います。
 ミスが少なくなんでもできる人は達人です。
 だから達人が名人かというとそうではない』


今年7月、東京新宿のスペインレストラン<エル・フラメンコ>が、
開業以来49年の歴史に幕を閉じました。

スペイン人によるフラメンコライブが毎日見られる老舗でした。
<エル・フラメンコ>の閉店は、ひとつの時代が終わってしまった
寂しさがあります。

(その後新たな情報で、オーナーと店名は変わりますが、
 引き続きフラメンコライブとスペイン料理を楽しめる
 お店として、10月にオープンされる事がわかりました.)


今、マドリッドに短期滞在中、この原稿と向き合っています。

acueducto第8号に掲載されたカルメラ・グレコ先生の
クラスレッスンも受けています。

カルメラは、格式高く伝統を重んじる
素晴らしい踊り手であり指導者です。

カルメラを始め、キャリアのあるアーティストは一様に言います。

最近のフラメンコはコンピューターゲームのように
テクニックだけをリズムに詰め込んでいて、
そこには唄やギターが無い、感情や内面の表現が無い。
それはフラメンコでなくて、ただのダンスだと。


次の世代を作っていくのは若い人達です。

“温故知新”、故きを学び、
これからのフラメンコ界に繋いで行ってくれることを願います。

2016年11月27日(日)第5回全国学生フラメンコ大会に、

“オーレ!"



第5回全国学生フラメンコ大会
第1位 常葉大学(静岡)マリポサ


第5回全国学生フラメンコ大会
第2位 早稲田大学(東京)バモ


第5回全国学生フラメンコ大会
第3位 京都産業大学(京都) ラス☆エストレ-ジャス


第5回全国学生フラメンコ大会
フィナーレ


第5回全国学生フラメンコ大会
武田佳恋(京都外国語大学) 滝澤良星(早稲田大学)



 文 山本秀実
 写真 京都外国語大学広報室







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