OKUNI ~出雲の阿国より~ (2009/10/17・10/31のイベント)

2009/10/17・10/31

<30周年記念公演> 山本秀実フラメンコリサイタル フラメンコと邦楽の競演

OKUNI ~出雲の阿国より~



金木犀もほのかに薫る清秋の東京と京都に、十二年の時を経て、
さらなる進化を遂げた<OKUNI>が甦りました。

幕開けの東京公演(10月17日 シアター1010)には、
チャリティー席を設け、招待した身障者の方々も、
一般のお客様の中へ自然に溶け込み、
華やぎと緊張感が混在した初日独特の空気を纏う会場も、
いつしか温かく和やかな色に包まれてゆきました。

また、京都公演(10月31日 京都府立文化芸術会館)では、
邦楽と所縁ある花柳界からのお客様が、艶やかな姿で客席に華をそえ、
開演前の会場には、はんなりとした雅やかな雰囲気が漂っていました。



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会場を埋めつくす満員のお客様の期待に満ちたざわめきも、
開演のベルと共に暗闇と静寂が支配し、
鉦(鉄)を鍛える音が響く中、OKUNIが動き出せば、
場内は一気に現代から神話の国へといざなわれてゆきます。




出雲の村から京の都へ。
OKUNIの道程と共に移りゆく場面を彩る、
ちりめんや西陣織など和の素材を使った衣裳や美術、
そして幻想的な照明。 邦楽からフラメンコへ、
フラメンコから邦楽へ、和と洋を往き来し融合してゆく音楽。



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台詞のない舞踊劇でありながら、
山本秀実の卓越した表現力とも相まって、
観客はOKUNIと共に 一喜一憂し、
<OKUNI>の世界へ惹き込まれてゆきます。

また、OKUNIの生き様とも重なる、
山本秀実の作品への情熱やその姿勢にも心震わされ、
クライマックスでは、さまざまな想いが去来し、思わず涙するお客様の姿も。



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感嘆のため息と拍手喝采の中、幕が下りても場内の余韻さめやらず、
鳴りやまぬ拍手に応えるべく、 出演者達が再び舞台へ。

踊りや演奏を披露しつつ、お客様に感謝を込めてご挨拶すれば、
客席からも自然と手拍子が沸き起こり、
場内が一体となったカーテンコールで、
熱くそして華やかに終演の時を迎えました。

同じ頂を目指し、作品への想いと構想を具現した出演者やスタッフ、
そして何よりご来場下さった 大勢のお客様によって、
<OKUNI>への旅は、大盛況の内にひとまず幕となりましたが、
これは終着駅ではなく、
新たな輝きへの始まりなのでは・・・という予感も。



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賞賛と早くも再演を熱望する多くの声は、
山本秀実がこの作品に込めた願いとメッセージが、
大きな感動と共にお客様の胸に確かに響き、
光明の種を蒔いた証とも言えるのかもしれません。


~花籠に月を入れて 漏らさじこれを 曇らさじと 持つが大事な~

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●月刊PASEOフラメンコ9月号より

自らの使命を果たすとき

「京都に生まれた自分がやらなくては!!」

山本秀実が『OKUNI~出雲の阿国より~』を初演したのは12年前。
京都スペイン文化協会を立ち上げた時だった。

スペイン文化の紹介、日西の橋渡しを目指す一方で、
阿国の生き方に惹かれ突き動かされていた。

古都・京都に生まれ育ち、長唄に三味線、太鼓は名取。

「私にはフラメンコも邦楽も同じように聞こえる。
 このコラボレーションは自分の中では自然なんです。
 振付も無意識に出てきます。」

出雲から一座を率いて京に上った阿国は、念仏踊りで人気を博す。
そこで彼女の運命を変える1人の”IJIN(異人)”と出会い
異国の踊りを学び芸を磨いていく。

異人に出会うまでを邦楽、出会ってからをフラメンコ、
終盤は邦楽とフラメンコのコラボレーションで物語を紡ぐ。

「最初は裸足です。
 彼に靴を渡されて、阿国はフラメンコと出会う。

 当て振りでなく、音と一緒に振付を作っていくので、
 リハーサルを見て邦楽の方は驚かれて、
 リズムはどうなっているのかと尋ねられました。」


各分野の第一線で活躍する共演者たちと一丸となって公演を作る。

「リハーサルで戦うのが作品を作る醍醐味」と笑う。

「私は日本人としての感性で外国の文化を表現したいのです。

 フラメンコと邦楽には土着性という共通点があり、
 邦楽のすばらしさ、フラメンコと邦楽のマッチングを
 みなさんに感じていただきたいと思っています。」


彼女が阿国を演じるのは、
阿国の人生に自らの半生を重ね合わせているからだ。

「京都の文化で育った私がフラメンコに出会った。
 それは決定的な出会いでした。

 阿国もまた異国の文化に出会い衝撃を受け、
 新しいものを生み出します。

 最愛の人に去られた阿国はどん底に落ち込みますが、
 そこからまた一座を率いて立ち上がる。

 その生き方を自分が踊ることによって、
 観てくださった方に共感していただければうれしいです。

 外反母趾の手術後、車椅子や松葉杖の生活を経験しました。
 踊るどころか、満足に歩くことすらできない生活。

 2度の手術を経て何とか踊れるようになるまで
 2年以上かかりました。

 踊り手として、この年月の焦燥感、
 ジレンマは今でも忘れることができません。

 それを乗り越えて今の自分がある。

 それぞれの人には必ず役目があります。
 もう一度、私ができる役目が、この『OKUNI』なんです。」




月刊 PASEOフラメンコ 9月号より




前回のリサイタルに頂いた感想はコチラ


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