月刊パセオ2010年9月号より



月刊PASEOフラメンコ2010年9月号より




薔薇  自らの使命を果たすとき 薔薇


「京都に生まれた自分がやらなくては!!」

山本秀実が『OKUNI~出雲の阿国より~』を初演したのは12年前。
京都スペイン文化協会を立ち上げた時だった。

スペイン文化の紹介、日西の橋渡しを目指す一方で、
阿国の生き方に惹かれ突き動かされていた。

古都・京都に生まれ育ち、長唄に三味線、太鼓は名取。

「私にはフラメンコも邦楽も同じように聞こえる。
 このコラボレーションは自分の中では自然なんです。
 振付も無意識に出てきます。」
出雲から一座を率いて京に上った阿国は、念仏踊りで人気を博す。
そこで彼女の運命を変える1人の”IJIN(異人)”と出会い
異国の踊りを学び芸を磨いていく。

異人に出会うまでを邦楽、出会ってからをフラメンコ、
終盤は邦楽とフラメンコのコラボレーションで物語を紡ぐ。

「最初は裸足です。
 彼に靴を渡されて、阿国はフラメンコと出会う。

 当て振りでなく、音と一緒に振付を作っていくので、
 リハーサルを見て邦楽の方は驚かれて、
 リズムはどうなっているのかと尋ねられました。」

各分野の第一線で活躍する共演者たちと一丸となって公演を作る。

「リハーサルで戦うのが作品を作る醍醐味」と笑う。

「私は日本人としての感性で外国の文化を表現したいのです。

 フラメンコと邦楽には土着性という共通点があり、
 邦楽のすばらしさ、フラメンコと邦楽のマッチングを
 みなさんに感じていただきたいと思っています。」

彼女が阿国を演じるのは、
阿国の人生に自らの半生を重ね合わせているからだ。

「京都の文化で育った私がフラメンコに出会った。
 それは決定的な出会いでした。

 阿国もまた異国の文化に出会い衝撃を受け、
 新しいものを生み出します。

 最愛の人に去られた阿国はどん底に落ち込みますが、
 そこからまた一座を率いて立ち上がる。

 その生き方を自分が踊ることによって、
 観てくださった方に共感していただければうれしいです。

 外反母趾の手術後、車椅子や松葉杖の生活を経験しました。
 踊るどころか、満足に歩くことすらできない生活。

 2度の手術を経て何とか踊れるようになるまで
 2年以上かかりました。

 踊り手として、この年月の焦燥感、
 ジレンマは今でも忘れることができません。

 それを乗り越えて今の自分がある。

 それぞれの人には必ず役目があります。
 もう一度、私ができる役目が、この『OKUNI』なんです。」

    月刊PASEOフラメンコ2010年9月号より
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